5月に入ると、日本の住宅街やビルの谷間に、風を受けて泳ぐ鯉の形をした吹き流しが現れます。
「鯉のぼり(こいのぼり / Koinobori)」です。5月5日の「こどもの日」は、もともと「端午の節句(たんごのせっく / Tango No Sekku)」と呼ばれる男の子の成長を祝う年中行事でした。鯉のぼり、五月人形、兜飾り、菖蒲湯――。この日にまつわる習わしには、それぞれ異なる由来と意味があります。
🎏 鯉が空を泳ぐ理由
鯉のぼりの由来は中国の故事「登竜門」にあります。黄河上流の龍門という急流を登りきった鯉が龍になったという伝説から、鯉は立身出世の象徴とされてきました。江戸時代、武家が端午の節句に家紋入りの幟(のぼり)を立てていたのに対し、武士ではない町人たちが鯉の形の幟を揚げたのが鯉のぼりの始まりとされています。
一般的な鯉のぼりは、一番上に五色の吹き流し、その下に黒い真鯉(父)、赤い緋鯉(母)、青い子鯉(子ども)と続きます。子どもの数に合わせて鯉を追加する家庭もあります。かつては庭に高いポールを立てて揚げるのが主流でしたが、マンション住まいの増加に伴い、ベランダ用の小型鯉のぼりや室内用の飾りも普及しています。
理解のポイント
端午の節句の習わしに関するポイントです。
- 五月人形と兜飾り:室内には五月人形や兜飾りを飾ります。武将の兜や鎧を模した飾りで、「強く、たくましく育ってほしい」という親の願いが込められています。有名武将の兜をモデルにしたものが人気で、伊達政宗の三日月の前立てや、上杉謙信の飯綱権現の前立てなどは定番です。購入価格は数万円から数十万円まで幅があります。
- 菖蒲湯(しょうぶゆ):5月5日の夜に、菖蒲の葉を浮かべた風呂に入る習わしがあります。菖蒲の強い香りが邪気を払うとされ、また「菖蒲」が「尚武(武を尊ぶ)」と同じ音であることから、端午の節句と結びつきました。この時期、銭湯やスーパー銭湯でも菖蒲湯を実施するところがあります。
- 柏餅とちまき:端午の節句に食べる和菓子として、柏餅(かしわもち)とちまきがあります。柏の葉は新芽が育つまで古い葉が落ちないことから「家系が途絶えない」縁起物とされています。関東では柏餅、関西ではちまきを食べる傾向があります。
- 「こどもの日」との違い:端午の節句はもともと男の子の行事ですが、1948年に国の祝日として「こどもの日」が制定された際には、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」日と定義されました。男女を問わず子どもの成長を祝う日として位置づけられていますが、実際の風習としては鯉のぼりや五月人形など男の子に由来する行事が中心です。
🎏 鯉のぼりの撮影スポット
GW前後の日本各地では、川や谷を横断するように数百〜数千匹の鯉のぼりを一斉に泳がせるイベントが行われます。群馬県館林市の鶴生田川(約5,000匹)、熊本県杖立温泉(約3,500匹)、東京都国立市の大学通りなどが知られており、大量の鯉のぼりが風を受けて一斉に泳ぐ光景はこの時期だけの撮影スポットです。
5月の日本を旅行していると、住宅街の庭先や公園で鯉のぼりを目にする機会があります。日本全国どこにいても出会える、春から初夏への季節の目印です。