『6月13日』装束をまとった馬が鈴を鳴らして歩く――岩手・チャグチャグ馬コ

6月13日、岩手県滝沢市から盛岡市へ向かう約14kmの道を、色鮮やかな装束をまとった馬の行列が歩きます。
「チャグチャグ馬コ(ちゃぐちゃぐうまっこ / Chagu Chagu Umakko)」は、農耕馬への感謝から生まれた岩手県の伝統行事です。国の重要無形民俗文化財に指定されています。馬の体につけられた無数の鈴が歩くたびに「チャグチャグ」と鳴る音が、この行事の名前の由来です。

🐴 鈴の音が「日本の音風景百選」に選ばれた行列

チャグチャグ馬コでは、約60頭の馬が赤や金の華やかな装束をまとい、頭から尾まで数百個の鈴をつけて歩きます。鈴の音は環境省の「残したい日本の音風景百選」に選ばれており、60頭分の鈴が一斉に鳴る音は、遠くからでも行列が近づいてくることを知らせます。

行列は午前中に滝沢市の鬼越蒼前神社(おにこしそうぜんじんじゃ)を出発し、約4時間かけて盛岡市の盛岡八幡宮まで歩きます。馬には子どもが騎乗していることが多く、沿道には地元の人々や観光客が集まります。

チャグチャグ馬コの起源は、農耕馬を蒼前神社に参拝させて無病息災を祈る「蒼前参り」にあります。東北地方では、馬は農作業に欠かせない存在でした。田を耕し、荷を運び、農家の生活を支えた馬に感謝し、年に一度、馬を着飾らせて神社に連れていく。その習慣が現在のチャグチャグ馬コに発展しました。

鑑賞のポイント

チャグチャグ馬コを見るためのポイントです。

  • 出発式:午前中に鬼越蒼前神社で出発式が行われます。馬が一斉に動き出す瞬間は、鈴の音が境内に響き渡る見どころの一つです。出発前には馬の装束を間近で見ることもできます。
  • 行列のルート:鬼越蒼前神社(滝沢市)から盛岡八幡宮(盛岡市)まで約14kmを歩きます。ルート沿いのどこからでも観覧できますが、盛岡市内に入ってからの区間は沿道に人が多く、盛岡八幡宮への到着時は特に賑わいます。
  • 撮影:装束をまとった馬の行列は、水田や山を背景にすると特に絵になります。盛岡市街に入る前の田園地帯が、風景写真としては美しいポイントです。
  • アクセス:出発地の鬼越蒼前神社はJR滝沢駅からタクシーで約10分です。到着地の盛岡八幡宮はJR盛岡駅からバスで約15分。東京から盛岡へは東北新幹線で約2時間15分です。

🔔 馬と暮らした東北の記憶

かつて東北地方の農村では、馬は家族の一員でした。「南部曲り家(なんぶまがりや)」と呼ばれる岩手県の伝統的な農家建築は、人の住居と馬の厩舎がL字型につながった構造を持っています。人と馬が同じ屋根の下で暮らしていた時代の名残です。

農業の機械化が進み、農耕馬の姿は日常から消えましたが、チャグチャグ馬コの日だけは、装束をまとった馬が盛岡の街を歩きます。岩手山を背景に田園地帯を進む馬の行列と、鈴の音。6月の東北を旅行する機会があれば、この行事は盛岡を訪れる理由の一つになります。