5月15日、京都御所から下鴨神社、そして上賀茂神社へと、平安時代の装束をまとった約500名の行列が都大路を歩きます。
「葵祭(あおいまつり / Aoi Matsuri)」。正式名称は「賀茂祭(かもさい)」。祇園祭、時代祭と並ぶ京都三大祭の一つで、その起源は約1500年前にまで遡ります。
👘 「祭」といえば葵祭だった時代
葵祭の起源は、欽明天皇5年(544年)に遡ると伝えられています。凶作と飢餓、疫病の蔓延に見舞われた際、賀茂大神の祟りであるとして馬を馳せ祭礼を行ったのが始まりとされています。
下鴨神社と上賀茂神社の両社の例祭であり、天皇の御使いである勅使が奉仕する「勅祭(ちょくさい)」です。平安時代には、「祭」と言えばこの賀茂祭を指すほど、貴族社会に根づいた最重要の祭礼でした。『源氏物語』にも葵祭の場面が描かれており、牛車の場所取りを巡って葵の上と六条御息所が争う「車争い」の段は有名です。
祭りの名前にある「葵」は、行列の参加者全員が身につける双葉葵(ふたばあおい)と桂の葉の飾りに由来します。牛車にも、牛にも、勅使の冠にも葵の葉が飾られます。
鑑賞のポイント
葵祭を見るためのポイントです。
- 路頭の儀(行列):葵祭のハイライトは「路頭の儀」と呼ばれる行列です。平安装束に身を包んだ約500名、馬約40頭、牛4頭、牛車2台、輿1丁が、京都御所を10時30分頃に出発し、下鴨神社を経て上賀茂神社へ向かいます。全長約8kmの行列は、途中休憩を挟みながら約5時間かけて進みます。雨天の場合は翌日に順延されます。
- 斎王代(さいおうだい):行列の中心にいるのが「斎王代」と呼ばれる女性です。かつて賀茂神社に仕えた未婚の皇女「斎王」に代わる役で、毎年京都ゆかりの未婚女性から選ばれます。十二単に似た重厚な装束をまとい、腰輿(およよ)に乗って進む斎王代の姿は、行列で最も注目を集めます。
- 観覧スポット:京都御所内と下鴨神社参道には有料観覧席が設けられます。無料で見る場合は、行列のルート沿いの歩道から観覧できます。京都御所の出発地点、下鴨神社の糺の森の参道、北大路橋付近が比較的見やすいポイントとされています。有料席は事前販売で、例年4月上旬から発売されます。
- 前儀の行事:5月15日の路頭の儀に先立ち、5月3日に下鴨神社で流鏑馬神事、5月4日に斎王代禊の儀、5月5日に上賀茂神社で賀茂競馬(かもくらべうま)、5月12日に下鴨神社で御蔭祭など、多くの前儀が行われます。GW期間中に京都にいれば、これらの前儀から葵祭を追いかけることもできます。
🐂 平安時代が歩いてくる
京都三大祭のうち、祇園祭は山鉾の巡行、時代祭は各時代の衣装行列が見どころですが、葵祭の行列は平安時代の一点に絞られています。甲冑も武者行列もなく、あるのは平安貴族の装束と牛車だけです。その分、1500年前の宮廷文化がそのまま目の前を通り過ぎていくような独特の静けさがあります。
行列のルートは京都御所から下鴨神社まで約2km、下鴨神社から上賀茂神社まで約6kmです。全行程を追いかけるのは体力が要りますが、下鴨神社の糺の森で行列を待ち、到着後に境内の社頭の儀を見る、という過ごし方であれば半日程度で堪能できます。5月15日が晴れであれば、新緑の京都で平安時代の行列を見る一日になります。